浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1096話

常任布教師 金台寺 奥田昭應

年が改まってのお正月。
しかし、昨年にお身内の方をなくされているご家庭では、静かな年始を迎えていることと思います。例年なら、家内安全のご祈願に寺社に初詣をされますが、今年ばかりは、年始から、菩提寺やお墓参りに行ってきますという方もおられることでしょう。
大切なご家族が亡くなって、いつもと違うお正月を迎え、あらためて寂しさを感じていることでしょう。
昔から、「諸行無常」、「会者定離」とは申しましても、その別れが突然、自分のうちにやってくるとは・・・ 世間の道理と、判っていたはずですが、いざその立場になりますと、やはり、やりきれないものがあります。
家族との別れ・・・あらためて先立った人の大切さが、身にしみて分かって来るのかもしれません。
このように、私たちは、命と向かい合うことにより、はじめて命の尊さに気付かされるものです。
家族だけでなく、近しい人は、ご兄弟や、ご近所、勤め先の方など、ご縁のある方が、亡くなられた、病気になられた、震災に被災されたなど、やはり、不幸な知らせにふれたとき、自分のご家庭に置き換えて、色んなことを考えるものかもしれません。
昨年3月の東日本大震災でも、ご家族のこと、働くということ、沢山のことを考えさせられた、という人も多く居ることでしょう。
生きるということ、生命とは、社会とは、家族とは、絆とは・・・
お釈迦さまは、この「生きるということ」、「生命とは」という問題に、まさに光明をそそいだ方です。お釈迦さまの教えをつづったものが、後に「経典」となるわけですが、「お経」の「経」とは縦糸という意味で、諸行無常の世間の中にあっても、どんなところで生きようとも、シッカリと心のうちに持つべきもの、人生の、社会の、まさに縦糸となる教え、という意味が込められています。
この尊い教えを、一人でも多くの方に伝えたい、ご理解頂きたいと、お釈迦様自身も80歳のご高齢となり、亡くなるその日まで、伝道の旅をお続けになられました。羅漢と讃えられる弟子達もまた、国中に伝道の旅をなさいました。何代にもわたって弟子達は、川を渡り、山を上り、県境を越え、国境を越え、やがて世界中の人々に、その大切な教えを広めてゆかれました。

次回は1月11日にお話が変わります。