浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1108話

現代ほど価値観が多様化している時代はないかと思います。
先日、新聞社が行った葬儀についてのアンケートで、簡素に行いたいと答えた方が92%にのぼるとのことでした。私のお寺でも家族葬や、葬儀をせずに火葬だけする直葬の希望が増えてきたのが現状です。

確かに安価で済ますことが出来、気の置けない家族と故人の最後を共にする、というのは素敵なことだと思います。
しかし、家族葬を行ったあるご遺族が、その後が大変だったと打ち明けてくださいました。故人の生前のご意向で家族葬を行ったのですが、葬儀後、訃報を知って自宅に訪ねて来る友人・知人の方が途切れず、連日対応に追われて疲れてしまった、と。
亡くなったとき周りに迷惑をかけたくない、誰しもが考えます。しかし、良かれと思ってした選択が結果的に家族を困らせ、声をかけてもらえなかった友人・知人を哀しませるというのは残念なことです。

震災がおき、明日は我が身という日々だからこそ、色々な価値観が許容される現代だからこそ、どうぞ身近な人と死について語り合ってください。不謹慎だ、縁起でもない、などと言っていても、遅かれ早かれ死は訪れます。老いも若きも関係ありません。亡くなるそのときに、こうしておけば、と後悔してもどうしようもできません。

「よく死ぬことは、よく生きることだ。」この言葉のごとく、死を見つめることで今生きている一瞬一瞬がさらに意味深いものになっていき、充実した人生に繋がっていくのだと思います。
そして、亡くなるそのときに阿弥陀さまがお迎えに来てくださいますよう、毎日お念佛をお唱えしましょう。「よく生きたから、よく死ねた。」西方極楽浄土でご先祖さまに胸を張ってご報告できるように。

次回は5月11日にお話がかわります。