浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1109話

「忘れ物には気をつけて」子供の頃より両親からよく言われた言葉です。
昨年、三月十一日十四時四十六分、未曾有の東日本大震災が発生。自然災害だけならまだしも人災とも言える原発の事故が重なり、国民にとり決して忘れてはいけない大災害となりました。
ゴールデンウィークに被災地へ赴いた方もいらっしゃるかと思います。一年を過ぎ報道等も一区切りついてしまった感がありますが、何も解決していませんし、終わってもいません。これから何十年にもわたり復興支援をしていかなくてはいけないのが現状です。

佛教には「代受苦」という言葉があります。震災以降、様々なメディアで使われているのでご存知のことかと思います。本当は自分が被災し亡くなっていたかもしれない。でも自分の代わりに佛さまがその苦を受けていただいた。そのお陰で今もこうして生活をできている。だからこそ感謝の心を持って毎日の生活をしていかなくてはなりません。

最近、他人を非難し、自分の立場を優位に導く、卑しい行為が散見されます。政界・財界は言うに及ばず、各界が対話の中で相手に対し不遜な態度で接し、時には声を荒立て怒声を浴びせる人もいます。
何かの役職に就いたから偉いのではない、人生経験の長さでもない、なんでもない普通の人が、たまたまご縁でその立場になったに過ぎません。

うわべに積み重ねお化粧したものはやがて剥がれ落ち、地道に裏打ちしたものだけが自分自身に残る。この度の東日本大震災からこんなことを学ばせていただいたと思います。

私たちはいつお浄土からお迎えが来るかわかりません。それまで得ばかり追わず、感謝の心を持って損に寄り添う生き方に変えてみませんか?

最後に法然上人のお歌をご紹介します。
「我心 鏡にうつる ものなれば さぞや姿の みにくかるらん」

次回は5月21日にお話がかわります。