浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1143話

小田原組 発心寺 田辺裕誠

 今年も早五月。♪夏も近づく八十八夜♪
誰でも耳にしたであろうこの歌の季節です。八十八夜とは、二月四日の立春から数えて八十八日目。春から夏へ、なんともよく考えられたものですね。さて立春が過ぎた頃、家族に囲まれてひとりのおばあちゃんが旅立ちました。祭壇に囲まれたお棺の上、官製はがきを組み合わせて描いた一つの絵が置かれていました。脱脂綿で立体的に表現された雲と雪、様々な小物がおどるパノラマの様な絵です。しかもこの官製はがき、ポストにバラバラに投函したそうで、受け取るおばあちゃんは一枚ずつ組み合わせて完成という手の込みようです。聞けば長期入院中のおばあちゃんの痴呆が進まないようにと孫娘が送ったのだそうです。
家族の愛情をいっぱい受けて穏やかな入院生活を過ごす中、家族はある決断をしました。からだが辛いことはもうしない。そしていっぱいおしゃべりして想い出残そうと。
『ずっとそばにいるから、大丈夫だよ』
『よく頑張ったね。よく辛抱したね。えらかったね。も少ししたら苦しみなんかどっかいっちゃう。みんなここにいるよ』
最後臨終の時、誰だって楽に逝きたい。死は怖くてしかたない。でもそこが愛情に満ちた場所であれば癒され救われる。
癒し。それは智慧と慈悲に満ち満ちた阿弥陀さま。救いは阿弥陀如来の本願信じて念仏称えよと説かれた法然上人さま。
言いかえれば癒しと救いを八百年も前に法然上人は説かれた。
その法然上人のおことばに
『深く弥陀の本願を信じて念仏すれば一声に至るまで決定して往生するよし』とあります。日頃からお念仏道にはげみ、癒しとお救いを願おうではありませんか。


次回は5月の中頃にお話が変わります。