浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1144話

小田原組 発心寺 田辺裕誠

 新緑が映え風薫る五月、京都では華やかな葵祭。穀雨の頃降った雨は田畑を潤し、今植物を成長させてくれています。
 さて今回はお花の歌の話をしましょう。
 槙原敬之さん作詞作曲の『世界に一つだけの花』です。この曲の歌詞に「阿弥陀経」が関わっていることをご存じの方もいらっしゃると思いますがどうかお付き合いください。
 槙原敬之さんは麻薬事件を起こし、私たちの前から暫く姿を消しました。この間、仏教と出会えたことがきっかけで、この曲ができ上ったそうです。
 この曲の中に《この中で誰が一番だなんて争う事もしないでバケツの中誇らしげにしゃんと胸を張っている》の一節がありますがここは『阿弥陀経』の《池の中には蓮華が咲き誇り、青色・黄色・赤色・白色の華はそれぞれの光を放って、なんとも言えないほど清らかで芳しい》が元になっていて自身、ものすごくきれいな雨の降っている朝にぱっと頭に浮かんでくる景色を文章化しただけで自分が書いた感覚はなかった。とも語っています。仏教が、阿弥陀経がこのように表現されたことに喜びをおぼえます。
 《世界に一つだけの花。一人一人違う種を持つ》みなさんはどんな花を咲かせたいですか。もう既に咲かせた方もいらっしゃるでしょうか。これから夏に向かう季節。住む街、野山には益々いっぱいの花が咲き誇り、私たちを楽しませてくれることでしょう。
 法然上人が浄土宗をお開きになって八三八年の時が過ぎ、八五〇年の節目も見えてきました。この間どれ程たくさんの人がお念仏を相続してこられたでしょう。その入れ物の中、輪の中のひとりでありたいものです。
 仏の御光に摂取されゆく身にあれば、おもいわずらうこともなくとこしえかけて安からん。南無阿弥陀仏(光明摂取御和讃)


次回は6月の始めにお話が変わります。