浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1147話

港北組 龍雲寺 平元 正法

7月に入りました。7月と言えば新暦でお盆の月です。都心ではこの月にお盆を迎えるところも多い事でしょう。
お盆とは古代インドの言葉「ウランバーナ」のことで、逆さ吊りにされた苦しみを意味します。仏前にナスの牛や、キュウリの馬を置いたりお供え物をし、ご供養することによって苦しみから解放することが出来るのです。
私ごとで恐縮ですが、今年の5月下旬、中東のドバイに行って来ました。帰国の際、ドバイ空港で自分のミスから遅刻してしまい、飛行機の出発が10分も送れてしまいました。200名近い乗客全員が私一人のせいで、機内で10分も待たされたのです。皆、私を非難し怒り狂い殺意さえ感じとられました。針の筵とは正にこのことです。これはただ単に過失ではなく大きな罪です。
深夜発の便で皆大変疲れていて早く日本に帰りたいのに、甚大な迷惑をかけてしまいました。私は離陸後もこのことが気になり、声には出しませんでしたが心の中で何とか定刻通り到着するようお念仏を称えました。罪を消すにはそれしかありません。
離陸後3時間程すると、全行程の三分の一くらいのところでしょうか、機内がいつもよりずっと寒くなってきました。くしゃみをする者、咳をする者、鼻水をすする者があちらこちらに居ました。ひょっとして通常よりずっと高い所を飛んで、可能な限り一番速い気流の助けを得たのでしょう。
するとどうでしょう。優秀なパイロットのお陰でなんと定刻より25分も早く着陸したのです。乗客は到着時刻のアナウンスを聞き、皆怒るどころか喜び、いや感謝すらしているようでした。しかもいつの間にかくしゃみ、咳、鼻すすりの音も全て無くなっていたのです。
「災い転じて福と成す」
私はパイロットに助けられました。仏を見たような気がいたします。最初出発頃の状況が正に逆さ吊りの苦しみ「ウランバーナ」です。そしてお念仏の功徳、すなわちお盆のご供養があって、最後喜びに満ちた雰囲気が極楽浄土です。
人は皆、必ず苦境に落ちることがあります。そういった時、声に出さずともお念仏申すことにより確実に救われるのです。
「ナムアミダブツ」

次回は、7月の中頃にお話が変ります。