浄土宗神奈川教区テレホン法話 第739話

こころ

 私事ではありますが、2月は娘が生まれた月であります。娘の成長を見ていると、人がこの世に生まれて来るとき二つの命を持って生まれてくるのだなと感じます。一つは身体の命と、もう一つは心という命を持って生まれて来ると感じるのです。
 育つ過程で、いろいろな食べ物を食べ、甘い物、酸っぱい物、辛い物苦しいもの、というようにいろいろな物を味わって身体を育んでおります。
 心も身体と同じようにさまざまな心を味わって成長しています。
 一緒に遊び・話し・触れ合い・教え、いろいろな味を味わいながら心を育んでいるようです。
 身体が多くの物を味わい、ご飯を食べ、野菜を食べ、さまざまな命をもらいながら生きているように、心も家族や友達からいろんな心をもらい味わいながら育んでいるようです。
 自分の心は一人で作り上げ出来上がったものではありません。この世に生まれてからはまず親に触れ合い、兄弟と共に過ごし、友と遊び、会社に出ては同僚と、また結婚をし、妻と歩みそして子供を持ち、というように人と人が出会い共に過ごして行く、一緒にご飯を食べ、語らい、遊び、仕事をし、生活していく中で触れ合い、その人から良い事も悪い事も、いろんな心を貰いながら自分の心として行くのです。
 自分の心はついつい、たった一人自分だけで創り上げた物と、人は錯覚してしまいますが、実は自分の心は他の人から、心のかけらを貰い集め、与えられて自分の心として創っていくのです。
 優しい心は優しい心を与え創り、触れ合いのない心は温もりのない心を創ります。それが親子という関係だけではなく、全ての人と人との間にあります。
 知ってか知らずか人は他の人にいろいろな心を与え生きております。また人は知らず知らず人からいろいろな心を与えられて自分の心を創ります。
 心は人と人が互いに分け与え、共に生かしながら創り上げるものであります。どうぞこの心を大事にし、分け与え、自身と他の人の心を大切にして行きたいものです。

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