浄土宗神奈川教区テレホン法話 第790話

 こんなお話があります。
 ある信心深いご家庭にお孫さんができました。おじいちゃんおばあちゃんはお孫さんを可愛がって仏壇の前にはいつも一緒、お食事の時には、なむあみだぶっ、いただきます、ごちそうさま、そして、ごはんの中には、仏様がいらっしゃるのだよと、いつも言い聞かせておりましたので、お孫さんもごはんの中には仏様がいらっしゃるのだと、そう信じるようになっていました。
 お孫さんが小学生になって、ある時、理科の時間に、お米、ご飯が何でできているのか、分析をしてみましょう、ということになりました。お孫さんの胸はどきどきしました。とうとうご飯の中の仏様を見られるんだ。
 分析が始まりました。でんぷん、(炭水化物)、タンパク質、水分、無機質、などが出てきましたが、さあ、仏様がいっこうに出て参りません。お孫さんはとうとうたまりかねて、先生、仏様はどこ?、どこにいらっしゃるのー?先生の返事、ばかだなあ、お前、仏さんなんているわけないだろ。顕微鏡でもちゃんとみたじゃないか。さあ、お孫さんはショックでショックで、べそをかきながらお家に帰ってきておじいちゃんをなじりました。おじいちゃんのうそつき、ごはんの中に仏様なんていないじゃないか、おじいちゃんのうそつき。学校での出来事をめんめんと訴えました。
 黙ってじい一と聞いていたおじいちやんは、つと立ち上がって、それからお仏壇の前にすわります。ついてきたお孫さんはじい一とその様子を見ていました。おじいちゃんはなむあみだぶっ、なむあみだぶっ、とお念仏を始めました。いつまでもやめようとしません。そのうちおじいちゃんの目から涙がいっぱい溢れてきました。それを拭おうともせず、おじいちゃんはお念仏をやめようとしません。黙ってその様子を見ていたお孫さんは、そのうちはっとしました。おじいちゃんはすごい、おじいちゃんには見えるんだ、おじいちゃんはすごい、僕には見えないけど、おじちゃんには仏様が見えるんだ。
 見えない世界から見えないご先祖様がやってくるお盆が間もなくやって参ります。なむあみだぶ。

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