浄土宗神奈川教区テレホン法話 第958話

高座組 宮本明薫

 お彼岸の頃にはいろいろの花が咲き出し、やがて桜の花の季節を迎えます。つぼみの頃から待ちこがれ、花見といえば桜、昔から日本人は桜が好きですね。
私の家の前にも桜並木がありまして毎年見事な花を咲かせます。花の期間は短くてアっという間に青葉そして紅葉し枯れていきます。実は通動通学の人達が足早に通り過ぎてゆく中、毎朝たった一人黙々と落葉を掃いている人がいるのです。
さて六波羅密という言葉をお聞きになったことがありますか。
布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧で特にお彼岸にはこの6つを心がけていきましょうというもので、布施から始まっております。
私どもは常日頃、自分の欲しい欲しいの餓鬼の心で過ごしがちですが、他人が自分に何をしてくれるかではなく、自分には何が出来るかを考えてみましょう。自分にもこれなら出来る、身近な実行可能なプランはその気にさえなればいくらでも見つかるはずです。
サラリーマン生活で定年を迎え今までかえりみることもしなかった家の周囲に目をやった時です。みんなの目と心を楽しませてくれた桜なのに、花が散ると誰も見向きもしなくなる。そうだ、コンクリートの歩道に落ちた葉を桜の木の根元に敷いてやろう。大勢の人が歩く所がきれいになるし、木も喜ぶはずだ。掃けば散えい払えば又も散りつもる落葉です。我が心に散りつもった垢を掃くかのように、こうして毎年続けられているのです。
布施というのは相手の為にするのではなく自分のためにするのです。「させていただく」といった気持ちでなされた時、布施行になるのです。彼岸のこの時期、天地の恵みに感謝し施しの心を新たにしたいものです。布施行によって人格的にも変化をとげていくと思われます。