浄土宗神奈川教区テレホン法話第979話

港北組 正受院 朝倉 和信

「お手々のしわとしわを合わせて『幸せ』、南無。」と、小さな女の子が手を合わせるお仏壇のテレビコマーシャルをご存じでしょうか?かわいらしく一所懸命な姿が目にとまりますね。今回は、合掌とお念仏についてお話ししたいと思います。
 浄土宗では、皆様とご一緒にお念仏を唱えるときには「同唱十念」と申しまして、「南無阿弥陀」のお念仏を合掌して十遍唱えます。この合掌する両手には、十本の指があります。その指一本一本に、お念仏の気持ちを込めまして数えていただければ、十回のお念仏になります。では、そのお念仏にどう気持ちを込めればいいのでしょうか?人一人の心の中には、十の世界があると考えられており、これを仏教では「一心十界」と申しております。その世界は「地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人間界、天上界、声聞界、縁覚界、菩薩界、仏界(如来界)」の十界です。心の中にすべてありますから、その人の心がけ次第で仏にもなるし、地獄にも堕ちることになります。その心全部が一つになるという気持ちで、十本の指を合わせ、その指を十界になぞらて頂き、一念一念、阿弥陀様に帰依していただき、お念仏を唱えると良いと思います。
 さて、合掌の両手を合わせるという意味は、左手が衆生=我々、右手が仏様で、その両手を合わせることで、仏様と我々が一緒になった理想的な形であると言われております。また、仏教発祥の地インドでは、右手はきれいなものを持つ手、左手は不浄なものを持つ手、その両手を合わせることによって、きれいなだけではなく、また汚いだけでもなく、まさに『清濁併せ呑む』ことが人生であり、それを形で表したのが『合掌』であると伝わっています。あるいは、私達の心と、相手の心が一つになる、お互いに理解し合えるという気持ちを形にしているとも伝えられております。
 こういった気持ちが合掌に表れていると自覚し、その気持ちを込めて皆様にお念仏を唱えていたければと思っております。
 次回は 10月11日にお話が変わります。