浄土宗神奈川教区テレホン法話 第991話

浄青 後藤佳孝

 皆さんが大切な人を亡くされた時、どのようにその悲しみを乗り越えられたでしょうか。  かれこれ6年前のことです。ある方のご主人が亡くなられました。すると奥様はたいそう落ち込んで、来る日も来る日も泣き明かしていました。なぜなら、彼女はとてもご主人のことを尊敬しており、常によきパートナーであったからです。なかなかご主人の死というものを受け入れられず、納骨されるまでの間、お寺にお骨をお預かりすることとなりました。  その後、お寺に来る度にそのお骨にすがりながら「なぜ、私を残して先に往ってしまったの!」と声をあげてただ泣くばかりでした。ある時、彼女は悲しい顔をしてお墓の前に佇んで泣いておりました。尋ねてみると「私が辛い様子でここにじっと立っていたらきっと、彼は迎えに来てくれるはず!」と涙をこらえながら答えてくれました。そんな日々が続く中で、お寺として出来ることは、彼女の話を親身になってただただ聞いてあげることでした。どんな説法をしても、その時の彼女はそれを聞き入れるだけの心の余裕がなく、時には何時間にも渡りお話を伺うこともございました。  そんな日々の中で、彼女が話したことは、「よく時間が解決してくれると言われるけれど、私にとってそんな簡単に時間で癒されるものでないわ!」とのことでした。そういっていた彼女であるけれども、薄紙を離すがごとく、徐々に明るい表情に変わっていきました。  そして、ある日のこと「やっとわかったわ!お寺でお話を伺っていたことが。主人は私といつでも一緒にいるのね。それを感じる事が出来たの!」と満面な笑みでお寺に来ました。これはまさにお念仏を唱えてお浄土に往かれたご主人が、奥様を見守っていたからこそ彼女に伝わったのでしょう。そしていつの日か、お浄土で再開することを楽しみに毎日お念仏をお唱えしているそうです。皆さんも日々の生活の中で、お念仏をお唱えしましょう。南無阿弥陀仏 次回は二月一一日にお話が変わります。