みなさん、輪廻という言葉をご存じでしょうか。輪っかの「輪」に「めぐ廻」ると書きます。人が亡くなると、また違う命に生まれ変わり、それが輪っかのように途切れることなく繰り返される、というインドで生まれた考え方です。輪廻という言葉をご存じの方は、これは仏教の考え方と思われるかもしれませんが、実は違います。むしろ仏教では否定される考え方です。
今回はこの輪廻に関連して、浄土宗のお祖師様のひとり、曇鸞さまのお話をしたいと思います。
曇鸞さまは中国のお坊様ですが、その曇鸞さまがかつて、お念仏の信仰を持つまえ、仏教の修行を重ねていた途中、一時、中国に伝わる長生きの仙人になる方法を学んでいたことがありました。
その折に、インドから来たばかりの有名なお坊様と会う機会があり、そこで曇鸞さまは、「長生きの仙人になる方法より、優れた「仏教の教え」はありますか?」と尋ねました。それに対してそのお坊様はこう言います。「なんという質問か、比べるどころのものではない。この世のどこに長生きの方法があるのか?たとえ少し長生きしたとしても、しばらく死なないだけである。結局は輪廻を繰り返すだけだ」と。そして『観無量寿経』というお経を曇鸞さまに授けました。そして続けてこう言います。「これは仏教の偉大な教えである。これによって修行したならば、必ず死から解脱できるであろう」と。曇鸞さまはこのお経を丁寧に頂戴しました。
この出来事は曇鸞さまにとってとっても衝撃的だったと思います。そして授けられたお経を読みふけり、ついに、だれにでも行うことができる、輪廻から外れる方法を発見したのです。その方法こそ、お念仏により、阿弥陀様の浄土へ往生することだったのです。
実はこの瞬間こそ、浄土宗のもととなる教えが生まれた瞬間でした。