浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1085話

港南組 正覚寺 石川覚順

未曽有の東日本大震災から半年が経ちました。犠牲となられた方々の御冥福を改めて祈念致します。
今回は、間もなく秋のお彼岸を迎えますので、そのお話をいたしましょう。
彼岸会は皆様ご存知のように春分・秋分を中日とした一週間です。煩悩や迷いに満ちた この世界をこちら側の岸「此岸」と言うのに対して、向う側の岸・さとりの世界を「彼岸」 といいます。煩悩を脱した悟りの境地のことです。この期間は善行悪行共に過大な果報を 生ずる特別な期間であると考えられ、悪事を止め、善事に精進するよう勧められています。
806年に日本で初めて彼岸会が行われました。時の天皇の命で、諸国の国分寺では、 七日間金剛般若経を読誦したと記録されているそうです。俗に、中日に先祖に感謝し、残 る前後6日間は、悟りの境地に達するのに必要な6つの徳目、六波羅蜜を一日に一つずつ 修めるという由縁です。般若経は波羅蜜の実践を説くお経です。波羅蜜とはインド語の 音写語で「完成」という意味なのですが、「対岸に到った」という意味もあって「到彼岸」 とも訳されました。完成とは悟りや成仏の事ですし、到彼岸も往生や成仏の意味にとれま すから、ほぼ同じ意味と言えます。今では祖先を供養する行事として定着するに至りました。 彼岸の仏事は現在では浄土思想に結びつけて説明される場合が多くみられます。というの も、阿弥陀様がつくられた世界極楽浄土は、西方の遙か彼方にあるからです。
春分と秋分は、太陽が真東から昇り真西に沈みます。ですから特に念仏する者は遙か西の 彼方に確かに極楽浄土を感じながら、沈む太陽の方向を拝んで往生極楽を願い、亡き方々 に思いをはせたのが彼岸の始まりでありましょう。
被災地の一日も早い復興を祈念申し上げますと共に、哀悼と感謝の心を込めて、私たち共々 一声でも多くのお念仏をいたしましょう。

次回は9月21日にお話が変わります。