浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1142話

常任布教師 金台寺 奥田昭應

浄土宗の毎朝の勤行で、お読みする経文のなかに、『総回向偈・そうえこうげ』というお経があります。
願以此功徳 (がにしくどく)  平等施一切 (びょうどうせーいっさい)
同発菩提心 (どうほつぼだいしん)  往生安楽国 (おうじょうあんらくこく)
書き下してお読みしますと、
「願わくは、此の功徳を以て、平等に一切に施して、同じく菩提心を発し、安楽国に往生せん」

仏教の教えを表した四つの句、「四句」でまとめたものを「偈(げ)」と言います。先ほどお読みした「偈」の題は、「総回向偈」です。
「回向」とは、自分がそれまで積んできた善の功徳を、自分の為だけに留めるのではなく、仏教では、むしろ、他に振り向けていくことが大切だと、お釈迦様は説かれています。
功徳を積んだ私にご利益を、と願うのではなく、むしろ、功徳を積むことが出来たからこそ、他の命のみんなにも、振り分けていきたい、と願う姿が大切なのです。
振り分ける先は、生きとし活けるすべての命です。
普く一切の衆生に、平等に、施していこうとする心構えが大切です。
「施す」と申しますから、ホドホドではいけません。身を尽くして、「程」を超える。このぐらいでと、勝手にキリをつけるような小さな親切ではいけません。精一杯の思いやりをみんなに振り分けていこうとする、深い「お慈悲」の心から生まれた行いが尊いのです。 仏教ではこの行いを「化他」と呼びます。
自分が行ってきた善い行いも、普く「一切」に、平等に振り分けさせて頂くのです。自らを高め、同時に、他を導くという行いは、大乗仏教における理想的な仏教者像である菩薩さまの行い、そのものであります。
「同じく菩提心を発して」とは、功徳を振り分けた先の一切の衆生も、また同じように、「菩提心」、菩薩さまの慈悲深い、思いやりにあふれたお心となって、私たちも一切衆生も、皆が共に、安楽なる世界に、どうぞ生かさせて頂けますように、とお勤めの結びにお唱えしているのです。

次回は5月の始めにお話が変わります。