浄土宗神奈川教区テレホン法話 第764話
だんだんと秋が深まる中、皆様いかがお過ごしでしょうか。
この秋の季節は「みのりの秋」とも言いまして収穫の時でもあります。たいへん有難い季節でもあります。この有難いという言葉は何気なく使っておりますが実は仏教から出てきた言葉なのです。
おシャカ様が弟子のアナンをつれて道を歩いていました。そして足もとの土を手のひらにすくってアナンに話しかけました。
「この手のひらの土を地面の土とどちらが多いかね」
とおシャカ様が聞くとアナンは
「それはもちろん地面の土です」
と答えおシャカ様は、
「世の中で人間として生まれてくるものはこの手のひらの土ほどわずかなものしかいないのだよ」
とおっしゃいました。
そしてさらにその手のひらの土を今度は自分の爪の上にのせました。そして
「爪の上の土と手のひらの土とはどちらが多いかね」
と聞きました。
「もちろん手のひらの方が多いです」
とアナンは答えました。おシャカ様は
「私たちはこの世の中へ不思議にも人間として生まれてきたが、その中でも仏の教えを聞くことのできる人は、この爪の上の土くらいの人しかいないんだよ」
と話されました。
まさに有難い事です。ありがたいと字に書きますと、有る事が難しいと書きます。つまり、ごくまれなこと、不思議なこと、という意味です。
おシャカ様のおたとえのごとく、私たちがここに生かされているのも、また仏の教えにあわせて頂いているもの、みのりの秋の収穫があることも、考えてみれば「なかなかありえない、不思議な出来事」なのではないでしょうか。この有難い不思議な事に感謝をして生活をしていただき、そしてなによりも感謝のお念仏を称える生活をしていただきたいものです。