浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1149話

高座組 極楽寺 稗貫 光遠

浄土宗神奈川教区テレホン法話第一一四九話、お電話頂き有難うございます。毎日暑い日が続いていますが、皆さん如何お過ごしでしょうか。今年もお盆の季節を迎え、お棚経で皆さんのご自宅にお邪魔する時節となりました。
去年のお盆参りのことです。あるお家でこんな話を聞きました。夕方、お散歩に出かけるおじいさんがおりまして、夕飯の六時には、必ずお家に戻って来られます。その日もお嫁さんが夕飯の支度していると、窓からおじいさんの姿が見えました。
「もう六時ですよ、おじいさん。早くお家の中に入って下さい」と声をかけました。ところが、これを聞いたおじいさん、ものも言わずご飯を食べ、すぐ寝てしまったんです。
お嫁さんは、いったい何を怒っているんだろうと思いましたが、さっぱり分かりません。おじいさんは、翌朝出かけ、お隣で話してるのです。「うちの嫁が、まさかあんなことを思っているとは。まったくひどいことを言う嫁だ」。ですからお隣の奥さんが、「おじいさん、何を言われたんですか」、昨日の夕方、ワシが家に帰ろうとしたら、家の中から嫁が「もうろく爺さん」と言ったんだ。(間)「早くお墓に入んなさい」とも言った。
さっそく隣の奥さんがやって来まして、「あんた、幾らそんなこと思っていても、そんなこと言っちゃダメよ」、「いや私はそんなこと言った覚えはありません」、「じゃあ、あなた何て言ったの?」(間)「もう六時ですよ、おじいさん」が、「もうろく爺さん」と聞こえ、「早く家の中に入って下さい」が、「早くお墓に入って下さい」と聞こえてしまった。
たったひと言の言葉が、誤解を生み出し、あんな穏やかなおじいさんが、鬼のように怒り、腹を立てしまう。私たち人間の心は、ささいなことで、すぐ波風をたて揺れ、過ち失敗を繰り返していくのです。
「繋ぐならつなぎ所につなぐべし、繋ぎながらも船は動けり」、南無阿弥陀仏としっかりお念仏を称えながら、阿弥陀様とかたい絆でしっかり結ばれれば、多少は心が揺れて、過ち失敗を重ねても、必ず間違いのない人生を歩むことが出来るのです。


次回は、八月の中ごろにお話の内容が変わります。またお電話ください。