浄土宗神奈川教区テレホン法話 第719話
日本人はクジラを食ベるので野蛮人です、などとヨーロッパやアメリカの人たちが捕鯨国日本を非難します。自分たちだって牛や羊をおいしいおいしいと食べているくせに、と反論したくなります。キリス卜教的な考え方によると、牛や羊は家畜であって言わば神様が人間のためにお創りになった動物だから、食べるのが当然ということのようです。
でも日本人や東洋人には、そういう考え方はないのです。牛を食べようが鯨て食べようが一緒です。馬を食べようがヘビを食べようがガチョウを食ベようが一匹は一匹、命を一つ頂くのです。その一つの命の重さに違いなんかないんだぞ、というのが仏教の立場なのではないでしょうか。
勿論この私もこの人間も一つの命。だから動物達皆の命を頂いています有難うの感謝の気持ちや、ごめんなさいね皆の家族だって悲しんでいるんだよね、という懺悔の気持。皆の命を無駄にはしないよという報恩の気持ち。これらが日本人の心の底に流れているのです。
とは申しましても近ごろの日本人ときたらどうでしょう。食事の前に手も合せない。うまいのまずいのとぜい沢三昧。よほど欧米の人の方が勝っているのかも知れません。
ともあれ、動植物と友達になって生き、自然と一体になってゆこうとする仏教の思想がなければ、人類も今世紀中に破滅するか、相当痛い目に会うでしょう。
やれ打つなハエが手をする足をする。小さなハエの命でさえ、おいらだって一つの命じゃないかよ、打つのか、やめてくれよと言っているのです。