浄土宗神奈川教区テレホン法話 第772話
本年最初のテレホン法話です。私たちは、平成15年、新年を迎えることができました。希望に満ちた新年、楽しいお正月をお過ごしの方も多くいらっしゃることでしょう。或いは、昨年、ご家族・親しい方に先立たれ、寂しい思いの内に新年を迎えられた方もおいでのことでしょう。そして、喪に服されている方はお正月の祝い事を控え、身を慎んでおられることと思います。
確かにお正月は一年の姶まりにあたり、家とその家族のその一年の平安を守るといわれております「年神」様をお迎えする、まさにお祝いの行事です。しかしながら、「盆正月」という言葉にもありますように、古来、お正月はお盆とともに二大節季とされ、ご先祖様の「み霊」をお迎えして祀る行事として、毎年7月15日と12月31日に、ご先祖様が実家に帰り、家族と喜びをともにする「魂祭り」が行われておりました。つまり、お盆のみならず、お正月にもご先祖様は帰ってこられる訳ですからで、門松をたててお迎えし、その目印として供餅が置かれたと言うことです。但し、次第にご先祖様を祀ることが、お盆を主体に行われるようになり、お正月の行事から徐々に仏教的な要素が除かれてゆくようになっていったようです。
そこで、今一度、あらためて、お正月の過ごし方について考えてみますと、ただ晴れやかにお祝いするばかりではなく、先立たれた方々に思いを致しつつ、このお正月、「その方々とともに過ごしているんだ」ということをかみしめながら、やがて必ず尽きるこの命、明日尽きるかもしれないこの命が今こうしてあり、今年も新年を迎えることができたことの尊さ、有り難さに気付く、そのことこそが大切なのではないでしょうか。