浄土宗神奈川教区テレホン法話 第793話

 8月に入りました。8月はお盆の月です。人間は誰でもいつかは死んでゆくのだと解って居りますが、いつ死んでゆくのかと云うことは、誰も解かりません。もし死ぬ日が解ったならば、冷静に行動をとることができなくなりましょう。一秒一秒が自分の死への歩みだと気がついたら、もうどうしてよいかわからなくなります。
 お釈迦様は、繰り返し、繰り返し人生の無常を説いております。無常とは、常がないと書きまして、人生がいつまでも続くのではなく、明日どうなるかわからないというこの世の現実を説いております。死の現実を認識して、生きることの尊さと、喜びに出会うのが仏教の教えでありましょう。
 お盆の行事は、年に一度、精霊が我が家に戻ってくるといわれ、祖先の御霊を丁寧にお迎えし、供養をしてさしあげる温かい血の通った人間関係の営みです。
 今日の欲望充足に走っている社会に対して、お盆の行事は、迎え火に亡き人の顔が浮かび再会を懐かしく思い、送り火に来年もまたという、お別れの哀愁が漂い、理屈を抜きにして、美しい情感に浸るひと時でありましょう。
 物の豊かさに心を奪われ、大切な人間関係を失っている今日、子供たちに心のゆとりを植えつけるよい機会であります。
 人生を正しく見つめなおし、残りの人生、有限な人生の一歩を、祖先と対話をして歩み出そうではありませんか。

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