浄土宗神奈川教区テレホン法話 第801話
「人の一生は重荷を背負うて、遠き道を行くがごとし。不自由を常とすれば不足なし。勝つことばかりを知りて、負くることを知らざれば害その身に到る。及ばざるは過ぎたるより勝れり」
浄土宗を信仰した将軍、徳川家康の言葉です。着実に道を歩み、決して無理をせず自らの体験をもとに戒めを持った人物像がうかがえます。
仏教に帰依する在家信者が守るべき戒(いましめ)の一つに五戒というものがあります。五戒とは一つに殺生をしてはならない。二つに盗みをしてはならない。三つによこしまな男女関係を結んではならない。四つに嘘をついてはならない。五つに酒を飲みすぎてはならない。の五つのいましめをさします。中には思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この五戒を通して、世の中を見回してみますと、何と殺伐とした世界が現前に広がっていることであろうと驚愕することでしょう。ゲーム感覚で殺人や強盗がおき、不倫、詐欺、酒の飲みすぎによる悪業、国家ぐるみでテロリズムがなされてしまう時代です。その時代の中において、常に叫ばれてきているのが情操教育です。それは、歴史や習俗を通して、元来、私たちの心身に根ざしていたものではなかったでしょうか。
人間、誰しもが持ち合わせてしまっている煩悩。この煩悩を戒めによって抑制し、先人の教えを敬い、少しでも清浄なる心を見出し、より良い世界、より良い社会、より良い家庭を築いていきたいものです。仏の教えは、人間の生きる道標となり、人々の心を潤すものです。その教えを求め、戒めを持とうと志す時には先ず、仏を頼りとし、法を頼りとし、僧を頼りとしてみて下さい。そして、「南無阿弥陀仏」と称えて見て下さい。そこには信仰の二文字が深く心に刻まれることでしょう。そしてその心は、崇高なる精神社会を築いていくものであります。