浄土宗神奈川教区テレホン法話 第834話
ある日、70歳過ぎのご婦人が寺をたずねてこられました。私は“うつ病”で病気になると一日中寝ています。何もしないので嫁に「近くのお寺でご詠歌を習ったらどうですか」と云われて来ました。とのこと。
初めてお逢いする方でうつ病。少々不安でしたが、「どうぞいつでもお出かけ下さい、お待ちしておりますよ」といいました。
しばらくしてご詠歌の練習の日に見えました。初めはそわそわ落ちつきがなく、話もしませんでしたが、何回か皆と一緒に稽古しているとだんだん落ちつき、自分のことを話すようになりました。ご主人の定年後、二人で沖縄で楽しく過ごしていたこと、十年くらい経ってご主人が亡くなり、当地の息子さん夫婦と同居するようになったことなどなど。息子さんには、二人のお子さんがいて、お嫁さんはおつとめですので、今までの暮らしとまったく違った生活に不安がつのったのでしょう。お孫さん、お嫁さんと口争いがたえず、いらいらがたまって病気になったのではないでしょうか。季節の変わりめとか、不満、不安があると何日も寝ていたり、よくなると、急に一人で沖縄へ行ったりと、その繰り返しを何年もしていたようです。
最近は、朝、本堂にお参りし、六地蔵に線香をあげ境内を掃除する毎日になりました。
ご詠歌の皆さんとも仲良くなり、「この頃、顔色もよく、元気になったわね」と云われています。
頼りにしていた人が亡くなって、これからどうしたらよいかという不安な時に、ちょっとしたことに腹を立てて自暴自棄になって、“病気が治らない”“もう死にたい”と言ったのでしょうが、今は皆と一緒に阿弥陀様の前でご詠歌をとなえ、“うつ病”をのりこえ、お孫さん達とも仲良くなっています。さびしい時、不満がある時はご詠歌にいらして下さい、お話もしましょう。心がやすらぎますよ。