浄土宗神奈川教区テレホン法話 第942話
小田原組 岩崎 正伸
先日、あるお檀家さんに、「何回忌まで法要をお勤めすれば宜しいでしょうか」と質問を受けました。確かに、当山の年回表には50回忌までしか掲示していませんでした。私は「ご事情もあると思いますが、なるべく永く、共にご供養してまいりましょう」とお答え致しました。しかし、私はこの返答が何処か無責任に感じたので、昔の過去帳を調べてみました。約100年前の1908年(明治41年)に日露戦争で亡くなられた兵隊さんがおりました。その家には今お孫さんにあたるおじいさんがいらっしゃいますので、このことをお知らせに伺いました。その時に日露戦争のお話を伺いました。当時の世界情勢は、どこかの国に支配されるか、産業を興して、軍事力を増強して支配する側に立つかどちらかしか無かったそうです。この兵隊さんは、激戦で知られる203高地で戦ったそうです。この戦いでは約1万5千人が戦死し、4万5千人が負傷したそうです。
この戦いの負傷兵の1人でしたが、終戦3年後に治ることなく亡くなられたそうです。日露戦争を教科書の活字でしか知らなかった私には、とても貴重な体験でした。現在の日本は平和で便利な世の中になりました。しし、何もかも揃ってしまって大切なものを失いつつあります。この兵隊さんを含む何十人、何百人のご先祖様の脈々と続く愛を受けて私たちは現代に生かされていることを忘れてはいけません。「仕事が忙しいから法事に行けない」「顔も見たことがない仏様だから法事には行かない」ということはご供養しない理由にはなりません。このことに気付かせてくれた、冒頭の質問をしてくださったお檀家さんに今はとても感謝しています。
秋のお彼岸シーズンです。お墓参りに行って
ご先祖様に感謝する良い機会です。是非お参り下さい。
次回は、10月1日にお話が変わります。