浄土宗神奈川教区テレホン法話 第966話

三浦組 小松崎成淳 江戸時代の中頃に、法道上人という方がおられました。この方一代の内に約五千席のお説教をなされたそうで、そのお話の中心は、親を大事にするという「孝行」を説かれたそうです。その法道上人のお言葉に

「鳩に三枝の礼あり、カラスには反哺の孝あり」

とあります。鳩には三つの枝の礼がある。親鳩が、例えば、何かの枝に止まりますと、小鳩は、その枝より三つぐらい下がったところの枝に止まって親を敬うそうです。 それから、親ガラスが、嘴(くちばし)で小ガラスに餌を与えて段々と大きくなりますと、年を取りました親ガラスに、今度は小ガラスが嘴で親に餌を与える。お返しをすることから、「反哺の孝あり」と言うわけであります。カラスにも鳩にも敬いの気持ちがあるというのに、万物の霊長たる人間が、生んで育てて下された親を敬わない様なことをしてはいけない、というような話を本当に良くなされたと伝えられております。

  仏法の教えでは、人として生まれることは、梵天から糸を下して、大海の底なる針の穴に、糸を通す如くと、この世の中に生を受けることは難しいことであると教えられております。実際、目の前の針の穴でも糸を通すのは難しいですね。それを空から糸を下して、深い海の底にある、針の穴に通すというぐらいの可能性で、人間として生を受けさせて頂いたことは、先ず、親のお陰であります。ましてや、念仏の縁を頂いている私達であります。悦んで、そういうお働きを、仏様がしていて下さるのであり、また亡くなられた親やご先祖のお陰であることを受け止めさせて頂くということが大切であると同時に、我々浄土のみ教えでは、その口に南無阿弥陀仏と申して頂く、ご先祖様・仏様のお陰を感謝してお念仏を唱えて頂く、そうすれば自ずと、子孫が栄え、幸せに暮らすことが出来ると教えられているわけでございますので、お念仏を通じて、その心を、育んでいただければ結構ではなかろうかと思うわけでございます。

次回は6月1日にお話がかわります。