浄土宗神奈川教区テレホン法話 第767話
私が子供の頃「うそをつくとエンマ様に舌を抜かれる」と母親からよく言われました。そのエンマ様の話。私の寺に赤い顔をされ、目をカッと見開いたエンマ様がおられます。小学2年生の時だったか、悪戯をした私を母親がエンマ様の前に正座をさせ「もう二度と悪い事はしない」と約束させられました。薄暗い本堂のエンマ様は迫力満点でもう恐くて恐くて。今でもよく覚えています。さて、地獄にいて亡くなった者の罪を裁くエンマ様には次のような話があります。エンマ様は元の名をヤマと言い、人類最初の人間でした。エンマは天上界に自分の王国をつくり、幸福な日々を送っていました。ところがある日、王国にたくさんの人間がやってきました。その中には悪人もおり、やがて悪人達は勝手放題を始めました。いくら諭しても悪業は直りません。そこでヤマは自分の顔を恐しい顔につくり変えることで悪人達を懲らしめることにしました。それ以降、ヤマは王国を捨て地獄をつくり、その王となり罪人を裁くエンマ大王になられたのです。そのお顔が今のエンマ様の顔なのです。死後、私達はエンマ様の前で生前の行為をエンマ帳によりチェックされ、裁判にかけられ、罪の軽重により地獄へ落とされます。地獄は8ランクあり、一番最初の地獄の刑期でもなんと1兆6200億年もあります。その間舌を抜かれたり、火の海に投げ込まれたりと様々な地獄の苦しみを味わうことになるのです。こんな冷酷な裁きをするエンマ様ですが、本当は優しい心をお持ちの方で、私達が地獄に落ちないように日々心配されているのです。エンマ様の小言集には(1)朝は気嫌よく起きろ(2)老人はいたわれ(3)泣き事は言うな(4)人には親切にしろ(5)仏をよく拝め、先祖は大事にしろ。勿論、うそはつくなと。最後に「人はいつかは死ぬ。地獄へは来るな」如何でしょうか。エンマ様のお心を大切にして、お念仏を申すことを忘れずに、明るく正しく仲良く過ごしていきたいものです。