浄土宗神奈川教区テレホン法話 第865話
皆様今日は。お暑い毎日でございます。
私は神奈川教区教化団副団長の落合と申します。どうぞしばらく私の話にお付き合いください。今回は「美しい花の咲くお浄土は本当にありますよ」と言うお話を致します。
私の親しい友人順子さんはかなり現実的に物事を判断する人で、「人間はこの世に生きている時がすべて、だから現在を大切にしたい」と言います。私もこの意見は大いに賛成です。ただ順子さんは「この地球上以外には世界は無い!」と言う考えの持ち主です。彼の国お浄土はあると考えたい私に、順子さんは「お浄土があるなら一度でいいから行ってきた人のお話が聞きたい」と笑い飛ばしていました。順子さんの家には順子さんのお母さんも一緒に暮らして居ます。私は親しみを込めて家族の方と同じように「おばあちゃん」と呼んでいました。おばあちゃんは日頃は庭の草むしりを小まめにして、季節のお花で庭を一杯にして楽しんでいました。
おばあちゃんが94歳になった平成15年の秋のことです。少し体調を崩したので近くの病院に入院したとの連絡を受けて、私はお見舞いがてら病院に行きました。丁度順子さんと手をつないで病室に戻ってきたところでした。私の顔を見ると「あんた、忙しいのに良く来てくれたね!」と言いながらベッドのところまで一人で歩いて行きました。私たちは「ヨイショ」と声を掛けながらおばあちゃんをベッドに乗せて寝かそうとしたとき、おばあちゃんは突然「わぁきれいな花が咲いているね、よく見たいから起こして頂戴」とはるかかなたの方を見つめています。順子さんは「おばあちゃん花なんか無いじゃない何を見ているの?」と言うと「きれいだね、光って見えるよ、もうちょっとよく見えるようにして、わぁ何てきれいだろう、素晴らしいね」と言いながらにっこり笑って静かに目を閉じました。ほんとにあっと言う間の出来事でした。「えっ?どうしたの?」順子さんも私も頭の中が空っぽになりしばらくは言葉も出ませんでした。そう、おばあちゃんは美しい花の咲くお浄土に旅立ちをしたのです。
そしてお葬儀が済み、お客様たちもお帰りになり静かになりました。花で囲まれたおばあちゃんの写真を見ながら順子さんはしみじみと言いました。「本当にお花の咲いているお浄土ってあるのね。おばあちゃんよかったねー」と。順子さんと私はこの3日間のできごとを振り返り思わず抱き合って、泣いてしまいました。諸行無常でございます。今回は「美しい花咲くお浄土は本当にありますよ」と言うお話を致しました。
ありがとうございました。 南無阿弥陀佛