浄土宗神奈川教区テレホン法話 第919話

港南組 法安寺 戸谷 瑞生 寺の境内には、唯今水仙の花が寒さの中凛とした風情で咲いています。この花を見つめておりますと、私が初めてお通夜を勤めさせて頂いたK少年の水仙の精の如き姿が想い出され今でも胸が熱くなります。K少年は高校3年生になる直前の今の季節に旅立たれました。重い病にゆえ自分の残された時間の少ない事の自覚、御両親はじめ周りの方達への心配り、病に対しての覚悟の程を御両親からお伺いして私は涙が溢れるばかりでした。K少年は、努力の結果大学付属の高校に入学して以来、勉強にスポーツにと打ち込み、青春時代の輝ける毎日を過ごして居りました。高校2年生になった頃、胃の辺りに違和感を覚え医師に診て頂いた所、進行性の早い胃ガンとの事で早急に入院致しました。御家族の心配も大変なものでした。K少年は僕の命は長くないかも知れないけれど、いつも暖かく見守ってもらい幸せだよ。子供の僕が先に死んでしまうのは親不孝だね。と語りその健気な言葉に切ない思いでしたと母親はおっしゃっていました。しかし夜中になるとK少年は布団をかぶり、1人で泣いている姿を看護師たちは何度もみては、共にK少年の手を握り一緒に泣くばかりですと御両親に伝えたそうです。看護師達は自宅の庭に咲いている花を持ってきては枕元に飾りなぐさめました。そして元気づけました。K少年には弟さんが居り、その弟さんがお見舞いに行くと、君に兄さんの命を重ねているよ。そして僕の希望も将来の夢も全て君に託しているからね。お父さんお母さんを宜しく頼むよ。とか細い手を差し出し弟さんの手に重ねられたそうです。看護師の方が水仙の花をK少年の枕元に飾った日の暁方空が白みかける頃にK少年はお浄土に旅立ってゆかれたそうです。枕の下には家族、友人、学校の先生、医師看護師達に宛てたメモが何枚もありました。命の尊さを感じます。私は貴方の事を忘れません。

次回は2月11日にお話がかわります。